enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

日記

「ひらつかの春のはまべに降る光 なみまがしわにながらみに」

4月初旬、家族に誘われて海に出かけた。 いつもは小暗い印象の松林が、木洩れ日で明るくなっている。松葉の枯れ葉を踏みながら、公園のなかの道をゆっくり歩く。アマドコロ、シャガ、サツキ、ハナズオウ、ニチニチソウ…緑と茶色の林に彩りがもどってきていた…

『小説家の休暇』の断片。

暇にまかせ、ぐるぐる思いめぐらすなかで……現在の自分という存在を形づくる意識というものは、結局は若い頃のそれと切れ目なくつながっているのだな……と思い至った(しごく当たり前なことなのだけれど)。 で、先日、歌舞伎座に出かけたことも、やはり過去に…

『神田祭』の鳶頭に涙する夜。

9日夕方、有楽町駅に着く。駅前の桜は、ずっと吹き荒れていた風雨にも耐えて、ほんのり明るく咲いていた。 前回『桜姫東文章』を見てから4年ぶりの歌舞伎座だった。「四月大歌舞伎」の絵看板を眺めたあと、天井に間近い3階席にたどり着く。今夜、再び仁左衛…

冷たい雨が降りやんだら。

お彼岸を過ぎれば桜も咲きはじめ…とはならず、冷たい雨の日が続いている。 17日、横浜に出かけたついでに県立図書館で本を借り、桜木町駅に向かう途中でよそ見をして段差に躓いた。『アッ…ここで転びたくない…何とか姿勢を戻さなくては…』と、前に倒れてゆく…

何年ぶりか…横浜市歴史博物館へ。

2日、横浜市歴史博物館で開かれている「文化財展」に出かけた。1月17日に「横浜のみほとけを語る」を聴いてから季節は進んだはずなのに、横浜の風は冷たく、博物館前の街路樹も寒々としていた。 何年ぶりだろう…久しぶりの横浜市歴史博物館だった。展示室…

まぶしい海。

26日、待ち望んでいた明るい光に誘われて海に向かった。 海までの真っすぐな通りを、ゆっくりと陽なたを選んで歩いた。朝晩の冷え込みを忘れてしまって、思わず『春だなぁ…』とうっとりする。 浜に着く。キラキラ輝く平らかな海の彼方から、白波が次々と押し…

ひさかたぶりの『第三の男』。

2月は家族の白内障の手術があり、いつもより緊張する時間を過ごすことになった。 通院の付き添いで横浜に通う日々。その合い間の24日、平塚市図書館で上映された『第三の男』を観た。 子どもの頃に「テレビ名画座」で初めて『第三の男』を観て、ラストシーン…

現実からの逃走。

あってはならない画像をネット上で眼にして衝撃を受け、その画像を閉じてしまった。イスラエル~ガザに関連した非日常的な画像の流れに混じっていたそれは、絶対にあってはならない場面だった。状況は何も分からない。ガザではないのかもしれない。また、フ…

仏像の”持続可能性”を学ぶ。

17日、横浜市指定・登録文化財展のトークイベント(山本勉氏×「みほとけ」さん)に参加した。 主催者は能登地震に言及される中で、その文化財の被災についても懸念を示された。(冬の陽射しが明るく射し込むアトリウムの時空間の彼方に、能登の現在があるの…

2018年12月の旅から。

2024年1月5日の樹々(文化公園で) 2024年…本当に大変な年明けとなった。 2011年3月11日、博物館近くの交差点で、足元が大きく揺れ動き、空の電線が大きく波打つのを見て、この世界が一変したように感じた。” ゆぁーん ゆょーん ゆやゆよん ”……そんな(空中…

元旦の海。

2024年になった。朝方、夢うつつとなって寝坊をした。外界では、すでに新年の日常が始まっていた。 急いで、干支飾りをウサギから龍に置き換える。(友人の手作りの人形に、それぞれ『一年ありがとう…これから一年よろしく…』とあいさつした。) 午後、南向…

海へ。

ずいぶんと海を見ていなかった。28日、次兄の家に花などを届けに行った帰り、浜辺に寄ってみようと思った。 浜辺では、運動部の合宿だろうか、群馬県の高校生たちが走り込んでいた。空は気持ち良く広がっているのに、大島や富士山は影も形も無かった。 『………

2023年12月の彩り。

2023年は夏の猛暑、秋の高温が続き、季節の移り変わりをすんなり受けとめきれないまま、12月を迎えた。 急に、12月になってしまった気がした…本当に、これからお正月がやってくるのだろうか?…と。 それでも少しずつ、冬らしい冷え込みが続くようになった。 …

佛法紹隆寺(諏訪市)を訪ねる。

年末を前に、友人たちと蓼科・親湯温泉に集まることになった。17日未明、平塚駅始発の電車で茅野駅へと向かった…私の場合、松本方面はいつも各駅停車で4時間半以上の旅になる…。 11月の一人旅に続く電車の長旅は、車窓から沿線の山景色などを眺めて過ごした…

2023年12月13日…明日から何かが変わる?

13日、受診する家族とともに横浜の眼科…私が昔、白内障手術を受けた眼科…に出かけた。 一日がかりの待ち時間は、溜まっていた新聞を読むことに使った(リュックは新聞で膨れあがった)。12月に入って朝刊の1面は連日、「安倍派」「裏金」の記事で埋めつくさ…

2023年の黄葉。

この秋のイチョウの黄葉は何だか一段と綺麗だ。 濃厚な黄金色となって、殺風景な街路を「秋!」にしてくれた。 ことに美しく黄葉したのは、私が見かけるイチョウだけだったのだろうか?

歌人相模の初瀬参詣推定ルート(20231121):”南海道”の「河内六寺」を訪ねて(1)

旅の二日目は6時に起床。いよいよ今日こそ、旅の主目的…歌人相模の初瀬参詣ルートを探すこと…を果たさねばと気負い立ち、7時45分に宿を出る。王寺駅に向かう朝の通りはかなり冷え込んでいた。 この日(21日)の行程は次の通り。(下掲の”個人的map”:①~⑨ の…

旅のメモ:2023年11月20日(長岡宮跡を訪ねる)

朝の富士(11月20日 新幹線から) 11月20日、小田原で新幹線に乗り、京都に向かった。 前回の一人旅は2022年9月…京都からの帰りの新幹線では集中豪雨のために車内で1泊する羽目となった。今回の一人旅…無事に予定通りこなせるだろうか…。不安と期待で張りつ…

鎌倉国宝館で「實雄」に出会う。

28日、強い風が11月の空を真っ青にしていた。 午後、鎌倉に向かった。観光客であふれる小町通りを、老体の反射神経を精一杯駆使してすり抜け、黄葉・紅葉に飾られた鎌倉国宝館にたどり着く。 特別展「国府津山 寶金剛寺-密教美術の宝庫-」…これまで、寶金…

乙訓寺の仏様。

安祥寺の十一面観音様を訪ねたあと、JR長岡京駅で降り、バスで乙訓寺へ向かった。乙訓寺に着くと、再び小雨に見舞われた。(境内で出会った方に会釈をすると、ゆるやかな声で「よう おまいりですぅ」と返された。やはり、京都なのだなぁ…と感じ入る。) 乙訓…

山科の十一面観音さま。

20日朝、京都・山科駅。西の空には虹が架かっている。通り雨だった。 山科駅から坂をのぼり、山の麓の安祥寺に向かう。(この道を20代の私ものぼった…あの時、仕事で初めて伺った頼りない私を迎えてくださった先生はお元気に過ごされているのだろうか…。当時…

11月の夕空。

11月になって外出の機会がふえた。 家族に誘われて熊野古道の旅にも出かけた。(初めての紀州は良いところだった。念願の「那智の滝」も拝することができた。) ただ、外出先での緊張をひきずり、常に心がソワソワとして落ち着かない。 そして明日からは一年…

枯れてしまった一本松。

4日、水辺の楽校に散歩に出かけた。秋の三連休…水辺にはなぜか人の姿が少ない。 茶色に広がる畑の向こうに色とりどりのコスモスが咲き残っている。ハクセキレイたちが畑の中をピョンピョンと跳ね歩いている。畑から急に飛び立ったヒバリたちが上空を勢いよく…

東京の空の下で。

日本国憲法が公布された記念の日…その11月3日、東京に出かけた。 そして、東京長浜観音堂で薬師様を拝し、上野で『ノルマ』を聴いた。久しぶりに長浜の仏様に逢う。久しぶりにオペラを聴く。ずっとずっと待ち望んでいた一日だった。本当に私には贅沢過ぎる一…

平塚の石仏…お釈迦様と阿弥陀様に出会う。

29日、「上吉沢の石仏めぐり」(平塚市博物館)に参加した。 今回のフィールドの吉沢地区は土屋地区とともに、私には特別に魅力的な地域だ。(その自然も歴史も、海辺近くに育った私には未知の deep な空間に感じられるから。) そして、久しぶりに秋の上吉沢…

「The moon of the thirteenth night is beautiful.」と「十三夜的月亮很美。」

Google翻訳で「十三夜の月、綺麗ですね」の英語訳と中国語訳をたずねてみた。 どちらの翻訳音声も素敵だった。とくに中国語の音声は詩的に響いた。(ふだん耳にする「Duolingo」の英語は個性的な声と発音だけれど、Google翻訳の音声は淡々として聞きやすい。…

浄楽寺:闇と蝋燭の空間で。

19日朝、横須賀の浄楽寺に向かった。 2018年4月に初めて拝観してからすでに五年が経った。当時、阿弥陀様の特徴的な視線が”彫眼”から発していると知って印象深く感じたことなどを思い出す。そして、今日はどのようなお顔をしているのだろうかと想像する。 境…

今年も秋がめぐってきたよ。

ベランダの窓から、金木犀のかすかな香りが迷いこんでくる。今日は貴方の誕生日。でも、ささやかな贈り物を届けることも、電話で貴方の明るい声を聴くこともない。 貴方がもういない秋。どうして? なぜ?逢いたいよ。声を聴きたいよ。 みんな、知らないうち…

「足柄」の神様・仏様たち。

秋晴れの13日、神奈川県立歴史博物館で開催中の『足柄の仏像』展に出かけた。 これまで、印刷写真で眺めていた仏様・神様が目の前に…。(あぁ、あのお像はこのような木肌、このような色合いだったのか…こんなふうな立体感だったのか…そんな驚きの連続だった…

美術館のラスター彩の器たち。

待ちに待った季節になった。 7日午後、「藤田嗣治の初期作品」を見ようと、平塚市美術館に出かけた。20代前半の彼が描いた「おことさん」と「自画像」には、とても繊細でやわらかで丁寧な空気感と…何よりも、若者のまっすぐな眼を感じた(彼の作品を、黒田清…