enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2015.8.21

 8月半ばを過ぎて、ようやく猛夏のトンネルを抜けることができた。身体はどうにか動かせるようになった。ただ頭はいっこうに働こうとしない。スリープ状態のまま、毎日が過ぎてゆく。
 今日は海に行ってみよう、波の音を聴きに行こうと思った。午後になって外に出る。雲のカーテンに閉ざされた空を見上げ、夏の翳りそのものを感じた。そして、季節のエネルギーの空しく穏やかな下降曲線が、私のぼんやりとした頭のなかへと通じているように感じた。
 海までの大通りを中ほどまで進むと、早くも海の匂いがした。きっと海は荒れているのだと思った。浜に着くと、入口の掲示板に遊泳禁止の標示が出ている。サメではなく、波なのだと思う。

 波打ち際に立つ。波は台風の前後と同じようにうねり上がっている。いつもの心地よい強弱のリズムを失い、次々と押し寄せ続ける高波。波底からは太鼓のような深い響きが伝わってくる。遠い台風の拍動でもあるような波の振動。8月もあと10日ほど…うっすらとそう思った。
 帰り道、唇にはかすかな塩味が移っていた。海水よりもやさしい潮風の味だ。

8月21日の海①
イメージ 1

8月21日の海②
イメージ 2

8月21日の海③
イメージ 3