今年、図書館近くの桜が満開になった時、母を思い出した。
そのけむるような桜色の横雲の下に、遠い母の姿を見たように思った。
もう二十年も前のことだ。
うららかな日だったと思う。
海近くの母の家から、その桜の樹の下まで母と来た。
あの頃の私は今よりずっと体力があった。
家から車いすを押しながら町中を抜けて桜の樹の下まで行った。
いっしょに夢のような誘うような桜を見上げ、そしてまた家にもどった。
今年はなぜだろうか…もう母に桜を見てもらうことはできないのだ…と思った。
『新撰和歌』(『新編国歌大観』)から
85 桜花 ちりぬる風の なごりには みづなきそらに なみぞたちける
111 さくがうへに ちりもまがふか 桜花 かくてぞこぞも 春はくれにし
4月7日の嵐に耐えた桜
4月7日の嵐に散った花びら
春の紅葉(4月8日)…おととし生まれの葉が、この新芽の季節に紅葉して落ちたもの? それとも去年の葉? はたまた今年の新しい葉?…