enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2017.4.12

 朝、ベランダに出ると、きらきらした光が眼に入った。
 季節が一歩進んだと思った。
 
 届け物を持って、海に近い次兄の家に向かう。
 じきに初夏へとつながってゆく陽射しのなかを歩いた。
 手術して曇りのない視界を取り戻した眼が、行く先々のサクラと出逢う。
 雨にも負けず、風にも負けず、サクラたちは満開の姿をとどめていた。

 季節を楽しむ。気ままに歩く。
 そんな時間に疚しさがある。いつからだろう。
 自分だけ、日常の安全な場所にいるような疚しさ。

 次兄に届け物を渡し、しばらく他愛のない話をした。
 別々の暮らしを歩み始めてから、半世紀近くになる兄と私の会話。
 
 次兄は、私が帰ろうとして道に出ると、「気をつけて帰ってね」と声を掛けた。
 子どもの頃から、ずっと優しいままの兄なのだった。

イメージ 1
満開のサクラ

イメージ 2

イメージ 3
近所のネコ…立派なヒゲだね。