enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2017.11.14

 14日、ようやく上野に出かけた。
 
 上野駅から公園にかけて、『今日は休日…?』と思うほどの人出だった。
 文化会館や動物園や美術館や博物館に吸い込まれてゆく人々。
 11月の空の下、みんなの何かわくわくした気持ちが行き交っているようだった。
 私もそうだ。ようやくの「運慶展」だもの。
 のびのびと大きく空に向かう木々たちは黄葉・紅葉がはじまっている。
 あらためて、東京の秋…と思う。 

 お昼時の「運慶展」。入場制限は40分待ちだった。
 2008年の「薬師寺展」の長く暑い苦行の待ち時間には及ばない。

 展示会場に入ってまっさきに出会ったのは円成寺大日如来坐像だった。
 人垣の外側を右手に回る。
 如来像の顔を斜めから横へとゆっくり見入ったとたん、涙が不意にあふれた。
 急な涙が分からないまま、ただ、『運慶とはこんな仏様を顕した人だったのか…』と思った。

 会場の中は老若男女が渦巻いていた。
 興福寺南円堂安置の四天王たちが居並ぶ会場では、巡る人々からさまざまな感想が洩れていた。
 持国天増長天多聞天も、背中や腰まわりなど、はちきれそうな量感で迫ってくる。
 「持国天が一番頼りになりそうだった。闘う男、って感じ…」
 私のすぐそばで、背の高い女性が傍らの男性にそう語っていた。
 そう言えば、持国天の左掌は実際、頼りになりそうなごつさだった。
 こうした群像が、「かっこいい!」と評される意味が初めて分かったような気がしたのだった。

 最後にもう一度”運慶の処女作”へと戻ってみた。少女の横顔にも見えてくるのだった。
 運慶という仏師は本当に一人の人なのだろうか…不思議な気持ちになる。
 外に出ると、傘をさすほどの雨になっていた。3時というのに、行列はまだ長く続いていた。

イメージ 1
噴水池に建つ楼閣…金色のパイプオルガンのような?

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ユリノキの黄葉(紅葉?)