25日、朝から上野に向かった。
今日一日、イメージするとおりに過ごせるのか、気にしていた。
不安の一つは、『フェルメール展』の混み具合。
もう一つは、絵を観終わったあとで、夜の『椿姫』を聴く余力が残っているか見通せない不安。
でも、そんな心配は無用だった。
願ったとおりの時間帯のチケットを買えた。目で追いかけてゆくほどの行列も私には短く見えた。人々に射す陽の光は温かかった。
展示室には色艶の美しい絵がゆったりと並んでいた。反射鏡のような保護ガラスも無かった。展示説明は壁紙に文字が浮きあがるだけの慎ましさだった。
美術館の外に出て、夜までの長い時間は読書で過ごした。頭痛も無い。呼吸も問題無かった。
『椿姫』…いったい何回観たことだろう。ヴィオレッタの歌い手は違っても、観るたびに泣いてしまう。
演出は、フェルメール展の色彩の余韻が蘇るように美しく、光と闇の構成が巧みだった。
楽しみにしていたアルフレードの西村さんは不調だったけれど、私の長い一日は、ふりかえれば、幸せな時間としてあっという間に過ぎてしまったのだった。
上野の森美術館への道標
上野の森美術館に射す光
入り口近くの看板(フェルメール:『ワイングラス』)…何度見ても、グラスが顔を覆いつくしているのが息苦しそうで不安になる。
『椿姫』のポスター