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私の第三十四夜をつづります。

八重山の野鳥①リュウキュウアカショウビン

 八重山の旅で、出会えれば嬉しいなぁ…と思っていたアカショウビン
 初めは西表島で偶然に、次は野鳥ガイドさんの案内で石垣市内を廻り、その姿を何回も目にすることができた。憧れていたものを実際に目にしたことの興奮。
 『あぁ、あれがアカショウビン?!』
 『眼がつぶら…』
 『ポーズ、モデルのよう…』
 『本当に赤い…』
 頭の中がぐるぐる回っているような気持ちだった。
 
 その鳥の名前はアカショウビンではなく、リュウキュウアカショウビンというのが正しいようだった。
 名前の通りに、全身が赤い印象なのだけれど、頭と身体はくすんだオレンジ色。
 くちばしは蟹のように鮮やかな朱色の光沢。
 翼は紫がかった海老茶色で、首元と背中には白い羽も見える。
 尾羽根はより一層、紫に近い色合い。
 
 その色鮮やかな印象は、啼き声のひそやかさとは結びつきにくい。
 私には「キョロロ キョロロ」というより「ひゅるひゅるひゅる」と聴こえた。
 どちらかというと口笛や木管楽器のような響きのように感じた。

 でも、なぜアカショウビンに憧れたのだろう?と思った。
 
 初めてアカショウビンの名前を知ったのは、たぶん学生時代に読んだ大江健三郎の作品のなかだった。
(多くの本を処分してしまい、今はその本を探し出せない。その鳥の名前が少年によって繰り返されるシーンは、なぜか分からないけれどずっと心に残っていた。)
 そして、実際にアカショウビンという鳥を見たのは、平塚市博物館に持ち込まれた”死んで硬くなったアカショウビン”だった。
 それは、市内南西部の住宅地で発見され、届けられたアカショウビン。やつれた姿だったと思う。
 そのアカショウビンは居合わせた人たちにしばらく見つめられたあと、教室の隅に置かれた大きな冷凍庫に保存された(その大きな槽が、そういう目的の冷凍庫であることも、その時初めて知った)。
 
 今思えば、渡りの途中で力尽きてしまったアカショウビンの骸だったのだ。高麗山を越えたところで行き倒れたのかもしれない。
 その鳥が平塚市内で見られたのはとても珍しい…そう教えられたことが、さらに強い印象となった。
(確かに、今まで見たことのない姿だったし、その名前は大江健三郎の作品で記憶していたのだったから。)
 
 大江健三郎の作品で、どんな啼き声なのだろう?と思ったアカショウビン
 博物館で変わり果てた姿を見て、もっと生き生きとした姿を見てみたいと思ったアカショウビン
 そのアカショウビンを、私も生きているうちに(大袈裟か?)、声を聴き、姿を捉えることができたのだった。

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マングローブの中のアカショウビン①(4月16日 西表島):
西表島から由布島へ向かう牛車の待合所で、眼の前を横切った鳥影が、まさしく赤かった。慌てて、飛び去った先のマングローブ林にカメラを向けると、暗い林の中に小さなアカショウビンの姿があった。ドキドキしつつ、息を詰めてその姿を撮った。

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くちばし左面の先が少し黒くなっているので、ほかのリュウキュウアカショウビンと区別がつく。なんという色艶だろう。生きている色。

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リュウキュウアカショウビン②(2019年4月17日 石垣市

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ときどき、シャックリをするように、首のあたりをビクンと動かす。何の動作だろう?

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くちばし右面の先はきれいだけれど、①~③と同じ個体。枝の上で、たびたび、ポーズを変える。息を潜めている私たちを警戒しているふうでもない。