12月31日。朝早く起きる。シャワーを浴び、洗濯をし、大晦日の買い出しに出かける。
街から家に戻っても、まだ9時だった。
『そうだ 海、行こう…』
(長塚さんの声が聴けなくなって、京都への旅心が薄れたような気がしているけれど、時々、どこかからあの知的な声が響いてくるのだ。)
大晦日の海には誰もいないはず…そんなことはなかった。
浜辺で、波の上で、人々はそれぞれの時間を過ごしていた。大晦日の街の慌しさなど素知らぬ風情で。
穏やかな陽射しだった。やや強い風に、青と緑の波色が重なり、白く巻き上がる。富士は雪を濃く厚くしていた。大島だけは姿がなかった。
波打ち際にうずくまる人がいた。手には大きめの袋と火鋏み。ゆっくりと立ち上がり、私のほうに近づきながら、ゴミを拾いあげては、袋の中へ。
少し迷ったあと、声をかけた。
お休みの日の朝、こうして浜辺のゴミを拾っているという。若い人だ。私は、といえば、のほほんとカメラをぶら下げているだけの姿。自分のチッポケな姿を恥じ入る。そして、若い人の、思いを行動にする勇気・持続する力・あきらめない心に励まされる。私にもまだできることがあるかもしれない…そう思えた。
明日は新しく始まる。変わろう。変えてゆかなければ。今のままで良いわけがない。
火鋏みでは集められない流木の山