大谷池の雪
昨年の11月末、初めて草津の湯に浸かった。
わずか1泊ではあったけれど、その酸性度の強い湯は、私の持病(喘息とセットで長々と付き合ってきた慢性的な皮膚の炎症)に、かなりの…驚くほどの?…良い効果をもたらした。
年が明け、ふと目にした新聞に、平塚から草津に直行するバス・ツァーの広告が載っていた。”奇貨居くべし”…もう一度、草津を訪ねてみようと決めた。
3月に入り、草津へ向かうバスに乗り込んだ。
外出によってコロナウィルスに感染する心配よりも、再びあの湯に浸かりたいという気持ちのほうが強かった(ちなみに、用意された大きなバスの乗客は10人に満たなかった)。
再びの草津。
今回の温泉は、前回よりさらに強く個性的だった(眼のふちが、湯にわずかに濡れるだけで、痛みで眼が開かなくなった)。そして、湯の中で皮膚を撫でるとぬるぬるとして、湯そのものの厚みを感じた。
3日間、朝に晩に、せっせと湯に浸かった。
いつになく食事も欲張ったことが災いしたのか、2泊目の夜半、胃も腸も反乱を起こした。何事も過ぎたるは及ばざるがごとし、後悔先に立たず…それでも、翌朝には、立って歩けるほどに回復した)。
宿の周りには林が広がっていた。
夜明けは林越しにやって来るのだった。
小鳥たちは澄んだ声で林間の空気を震わせた。
西の空には本白根山が白銀色の屏風を広げている。
その湯釜の青白いイメージは相似の形で湯畑へ流れ込むのだった。
また、カラマツやアカマツの裸の梢を眺めていると、不思議な調べが彼方の空から流れてくるのだった。
♪クサツヨイトコイチドハオイデ ドッコイショ オユノナカニモ コーリャハナガ サクヨ チョイナチョイナ♪
〈残雪の林のなかで〉
ウリハダカエデの模様