enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

ミステリアスな『ミステリウム』

 2年前、『日の名残り』という翻訳小説を読み始め、2日目で投げ出したことも忘れ、今回、完全休館に入る直前の図書館から借りてきた本が『ミステリウム』だった。

 しかも、著者のエリック・マコーマックの名もまったく知らないのだった。

  

『ミステリウム』の表紙:
ウィルス模様?を散りばめている。風変わりなデザインなのに、手に取って、すんなりと読み始めてしまったのは、2020年の今だからか?    f:id:vgeruda:20200413194840j:plain

 

翻訳小説…私にとって最初の壁はいつも、その翻訳文だった。
作品の内容以前に、その訳文がかもしだす雰囲気?に慣れることができるかどうか。
そしてもちろん、最強の壁は、著者がここぞと注力して描写を試みる対象に関心がもてるかどうか。また、その描写の癖のようなもの…過剰だったり、もってまわっていたり…につきあってゆけるかどうか。

『ミステリウム』の翻訳については、その戸惑うほどに生真面目な形にも、じきに慣れていった。
見知らぬ著者についても、その視線の先にある世界、それを捉える語り方の新鮮さにしだいに惹かれていった。そして、その見知らぬ世界を知ってみたいと思った。
つまり、『この小説を早く読みたい…』という自然な欲望が生まれていったのだった。


こうして、『ミステリウム』では、”いつもの壁”を乗り越え、見晴らしの利く尾根線に出ることができた。それだけでも嬉しかったけれど、さらに、予想もしなかった新しい景色に夢中になることもできた。

私にもまだまだ本との出会いがあるんだな…巣ごもり暮らしの賜物かもしれなかった。