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私の第三十四夜をつづります。

コロナ禍の日々に読む物語

 

コロナ禍のなかで読みたいと思ったのは、エリック・マコーマックという人の小説(物語)だった。
苦手な翻訳本だったけれど、休館前に図書館で『ミステリウム』を借り、休館中に『パラダイス・モーテル』を予約して借り足し、さらにネットで『雲』を注文した。

社会人になって小説(物語)を読む機会はめっきり減ってゆき、60代以降はまったくと言ってよいほど手が出なくなった。なのに今、続けてE.マコーマックという人の本を、しかも翻訳本を続けて読む気になったのは不思議だ。

たぶん、コロナ禍の日々の非現実的で単調な心理空間から、マコーマックの創りこまれた騙し絵のような架構世界へと旅に出ると、澱んでいた脳味噌がしばしグルグルと撹拌されて心地よかったからだ。

『雲』を読む段になってようやく、マコーマックという創り手の鮮やかな手さばきに自分ののろまな視力が少しずつ追い着くようになってきた。

そして、若い頃に倉橋由美子に夢中になった時の気分を思い出したりした。

次はまた、図書館でマコーマックの本(物語)を借りてこよう(この気持ちはどこか、新しく見つけて気に入ったお酒を、いそいそと買いにゆくのと似ている気がするのだけれど)。

 

f:id:vgeruda:20200604122340j:plain6月の黄葉(街路樹のネムノキ):じきに、夢見るような花の季節がやってくる。