長雨の日々、澱んだ空気を震わせて鳥がさえずる。
その”野鳥の時計”を壁に掛けてから、1時間ごとに美しい啼き声が響くようになった。
巣ごもりの部屋が、その瞬間、戦場ヶ原や伊豆高原の林にまぎれこむ。
今は夏鳥たちが訪れる。
部屋に朝の光が届くと、アカショウビンもやって来る。
夜のしじまを切り裂くようにホトトギスが啼き渡る。
日々移り変わる報道に心騒ぐ時、サンコウチョウの♪ホイホイホイ♪という明るい掛け声に励まされる。
草津の霧のなかで初めて出会い、その声は聴くことができなかったクロジも、惜しみなく歌ってくれる。
こうして、”野鳥の時計”は、『オルフェ』の映画で憧れた鏡の入り口のように、私を野鳥の棲む林へと誘って、向こうに広がる世界のゆらめく木洩れ日を感じさせてくれた。
今朝は、久しぶりに薄青色の空が広がり、”野鳥時計”の部屋にも光が射し込んだ。
長雨のトンネルを抜けた先、夏鳥たちの啼き声は、もっと明るく軽やかに響くのだろうか。
長雨に咲くバラ(7月17日 人魚姫の公園で)