23日、日盛りのなかを博物館に向かった。
駅を抜け、八幡様横の日陰道を通り、文化公園にたどり着く。
青天井から大きな風が噴水に吹き込み、白い霧が渦巻きながら舞い上がっていた。
そして、その霧が消えてゆく先には夏の終わりを告げるような雲が広がっている。
何だか、映画の一場面のように感じた。
光まぶしい公園から仄暗い博物館に入り、ホッとした。
寄贈品コーナーで始まった「砂丘の縄文時代」の展示から観てゆく。
相模湾の海岸線の前進と後退の変化が、目に焼き付くような形で展示されていた。
また、コバルトブルーの濃淡で示された「最終氷期の平野の地形」も刺激的だった(その深いクレパスのような相模川の青い谷を実際に覗きこんでみたくなった…怖そうだけれど)。
この図も私には新鮮だった。
縄文時代の土器の分布ラインが相模国府域の東西軸と重なっている…1000年前の海岸線が、こんなにはっきり示されている…。
(次兄の家はこの1000年前の汀線の内側すれすれの砂丘上にある。『更級日記』の作者はあのあたりを通り過ぎたりしたのだろうか?などと不思議な気持ちになった。)
万田貝殻坂貝塚の展示も久しぶりで、調査当時の現地見学会の雰囲気をなつかしく思い出した(上の坊式土器の存在もすっかり忘れていた。こんな感じの土器だったっけ?…初めて見たような気がした)。五領ヶ台貝塚と並んだ形の展示も印象的だった(できれば西方貝塚の資料も一緒に観たかった…)。
平塚市博物館では、この寄贈品コーナーのほかに、夏期特別展『標本で!植物観察』も開催中だ。
まず、展示会場の外廊下に貼りだされた標本展示「博物館のまわりで」のアートのような美しさにひきこまれてしまった。地面の上で生きていた時とは別の、透き通るように繊細な姿を見せてくれている(こんな壁模様のなかで暮らしてみたいな…)。
標本で埋めつくされた静かな展示室をゆっくり見てまわるうちに、今年の夏の疲れが薄れていくように感じた。夏の終わりに見学して良かった…あともう少し、夏の暑さに耐えられそうだ。