”小さな秋”を見つけようと伊豆に向かった。
しかし私もまた、”夏の後ろ姿”を追いかけることになった。
荷物を抱えて富戸の坂道を上がりきると、9月1日の陽ざしは気が遠のくほどに感じられた。絶え間ない車の流れが国道の路面まで熱くしているようだった。
久しぶりの外出は、「曇る空、読書、静かな時間…」のはずだったけれど、晴れやかな夏空のもと、暑さ疲れを重ねるように終わっていった。
ただ、私にとって、TVにもインターネットにも近づかない時間は貴重なものだ。伊豆の青い海、濃緑の樹海。夜更けて顔を見せた二十六夜ほどの月。坂道であえぎながら聞くつくつく法師、葛の花の甘やかな匂い、飛び交うシオカラたち。見つけるまでもなく、伊豆の小さな秋は始まっていた。
大島と利島
富戸の坂道
葛の花
大島(とカメラの前を横切ってゆく虫)