enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2013.9.3

 ”小さな秋”を見つけようと伊豆に向かった。
 しかし私もまた、”夏の後ろ姿”を追いかけることになった。
 荷物を抱えて富戸の坂道を上がりきると、9月1日の陽ざしは気が遠のくほどに感じられた。絶え間ない車の流れが国道の路面まで熱くしているようだった。
 亜熱帯のような夜は寝苦しく、『源氏物語の結婚』(工藤重矩 中公新書 2012年)、『和泉式部歌集』(清水文雄校訂 岩波文庫)などを持ち運んだ甲斐もなかった。
 久しぶりの外出は、「曇る空、読書、静かな時間…」のはずだったけれど、晴れやかな夏空のもと、暑さ疲れを重ねるように終わっていった。
 ただ、私にとって、TVにもインターネットにも近づかない時間は貴重なものだ。伊豆の青い海、濃緑の樹海。夜更けて顔を見せた二十六夜ほどの月。坂道であえぎながら聞くつくつく法師、葛の花の甘やかな匂い、飛び交うシオカラたち。見つけるまでもなく、伊豆の小さな秋は始まっていた。
 
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大島と利島
 
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   富戸の坂道
 
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葛の花
 
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大島(とカメラの前を横切ってゆく虫)