enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

2012.8.31

昨夜、窓から眺めた空には雲ひとつなかった。 白く光る月が、小さな船のように静かに西へと進んでいった。 横向きに寝ころび、右腕をさしだすと、その影が鮮明な左腕になった。 本当に身体につながっているように感じられる、リアルな影の腕。 8月最後の日の…

2012.8.28

夏の光と秋の光の入り混じる高原で、 なつかしい風の声を聞いた。 落葉松林を抜ける風の声。 海岸の松林の梢を渡る昔語りの声でもない。 冬の夜、庭の竹笹にささやきかける声でもない。 やがて金色の雨を降らす落葉松林を抜けて、 風が今年の夏の終わりを告…

2012.8.25

昨夜、平塚の海辺で燃え上がるような花火を観た。 ハマヒルガオが咲いていた砂丘にすわって、夕暮れから打ち上げを待った。 西の空に富士の夕影、南の水平線に大島、見上げれば白い月、そして波の音と柔らかな風。 海岸線の町の光が点々ときらめき始めた。 …

2012.8.20

夏の戸に浮き輪のリースをかけてみたら 洗ったシャツがもうスローなダンスを踊ってる 南の風が忙しく絵日記のページをめくってゆく ワクワクする入道雲がしぼむまで 絵日記は白いまま 夏の戸はあけっぱなし

2012.8.15

時が砂のようであったなら、音をたてずにさらさらとつもっていく。 果てた命も砂のようであったなら、時とともに時にまぎれてつもっていく。 昨日の夕空には、久しぶりに富士のシルエットが浮かんでいた。 砂丘から富士を眺めようとして、あやうく、足元の青…

2012.8.13

昨日の夕方、散歩に出た。 オリンピックの男子マラソンの中継が始まる前には帰るつもりだった。 走る競技はシンプルで気持ちいい。 子供の頃からお正月の駅伝が楽しみだった。成長するにしたがって、新年の魅力はみるみる色褪せてしまったけれど、今でも、朝…

2012.8.9

8月の紺碧の空と強い陽射しには、子供の頃から、どこか死の影が隠れているように感じていた。 それは無意識に刷り込まれた記憶の影なのだろうか。 戦争を経験しなかった私は、語られるもののなかに、その影を感じ取ることしかできない。 『父と暮せば』とい…

2012.8.7

季節の記憶は光の強さや角度と係わっている気がする。 八月という季節の奥にあるのは、意識が遠ざかるような真昼間の光の記憶だ。 道を歩きながら、一瞬すべての音が消え、白い光に溢れた世界に閉じ込められる。 どこかですでに経験したような・・・時が止ま…

2012.8.4

去年の8月は馬入の花火も無く、薄暗く蒸し暑い節電の記憶が残った夏だった。今年は24日に花火が再開される。子供の頃は、実家の二階にあがって、暗い部屋から東の空を見守った。夜空いっぱいに大きな光の花が次々に輝き、儚く流れ消えるようすを飽かず眺め…

2012.8.1

昨夜、窓を開けて寝転がると白い月が高く上がっていた。 『もうすぐ満月・・・』 そう思いながらじきに寝てしまった。 若い頃、年配の知人がいた。電話連絡をする場合、夜は8時前に電話しなければならなかった。8時にはすでに寝てしまっているからだった。『…