enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2012.8.9

 8月の紺碧の空と強い陽射しには、子供の頃から、どこか死の影が隠れているように感じていた。
 それは無意識に刷り込まれた記憶の影なのだろうか。
 戦争を経験しなかった私は、語られるもののなかに、その影を感じ取ることしかできない。
 『父と暮せば』という映画も、そうした”語られるもの”の一つであり、何度観ても、そのたびに新しい。
 父と娘の言葉がキラキラと心に残るのは、二人芝居の魅力がそのまま映像化されているからなのだろう。
 この映画の中で、平塚の横浜ゴムの敷地内にあった洋館の一部が、図書館の建物として使われたと聞く。
 現在は、”八幡山の洋館”として平塚八幡宮の西隣に移築され、先日も第1回平塚市遺跡調査・研究発表会の資料展示場として使われたばかりだ。
 火薬製造所の英国支配人が使った建物が日本海軍の手に渡り、米軍による空襲を免れ、戦後はGHQや横浜ゴムの施設となって、広島の1945年8月を描く映画に使われ、今は移設・保存されて市民が集う場所となる。
 私の両親、祖父母の世代が、こうした大きくうねる時代の波を越えて生き延びてきた。その上に、私の今の時間があるのだろう。8月はそういう季節なのだ。
 
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                                                                                                      八幡山の洋館(2009.4.4当時)