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私の第三十四夜をつづります。

2017-01-01から1年間の記事一覧

大晦日に歌人相模を訪ねる

一年の終わりに、歌人相模の歌を掲げておこうと思う。 11世紀に生きた歌人相模という存在と、21世紀に生き続ける自分とのささやかな縁を、これからも細々とつなげていきたいと思うから。 ~『相模集全釈』(風間書房)から引用~ はての冬 280 思ふ事 月日に…

2017.12.29

いつからだろう…秋になってからだろうか。海からずいぶんと遠のいた暮らしをしている。 今日こそと思い立ち、家を出る。陽射しは温かいし、呼吸も澄んでいる。いつもこうだとありがたいのに。 浜辺には多くの高校生たちの姿があった。それぞれのウエアの背中…

2017.12.28

27日午後、友人たちに逢うために、師走の東京に向かった。 逢って、話して、今年一年の垢を落としたい…とメールに書いてきた友人もいる。みな、すでに60代後半の年齢になった。そして、いろいろとあるのだ。まだまだ、煩わしいこと、気がかりなこと。腹立た…

2017.12.26

2017年も残り少なくなってゆく。少しさびしい。そんな時は忙しそうに動き回るに限る。 それに、年を越す前に、浮世の用事も少しは片づけなくてはならないのだし。 エイヤっと早起きし、勤勉な通勤客たちに混じり、東海道線から相模線に乗り換えて北に向かう…

2017.12.21

午後、まだ陽射しの温かいうちに、図書館に向かった。 先だって借りた本は対話集ということもあって、珍しく返却期限前に読み終わったのだった。 私には歯が立ちませんでした…いつものように、そんな敗北感を抱かずに本を返せると思うと、足取りも軽い。 そ…

納戸に眠っていたもの

この秋から冬にかけ、思うところあって、ささやかな身辺整理を試みた。 現在の部屋に移り住んで10年。 何かしらを求め、あてどなく動き回るうちに、他人にとっては”ゴミ”そのものでしかないものが随分と溜め込まれていた。 それらをよくよく見れば、今となっ…

今年最後の講座

13日午後、このところの冷え込みに怖気づきながら、鶴見に出かけた。 年内の講座は今日で最後…秋に始まった講座も残り僅かだ。そして、しばらくは、通うところがなくなってしまう。 私にとって、仏教美術の講座は考古学と違って、ひたすら耳に流し込むだけの…

2017.12.11

10日午後、渋谷で「ルチア」を聴いた。 ホールで初めて「ルチア」を聴いたのは2011年3月5日…上野で15時開演だった。 そうだった。その約1週間後、あの大地震が発生し、津波が東北地方を襲った。 それからというもの、コンサートホールの暗闇に包まれ、音楽の…

2017.12.10

9日午後、友人と1か月ぶりに逢った。 逢ってすぐに、とても小さな紙袋を手渡された。 「畑で取ってきたばかり…ちょっと珍しいもの」と言う。 『何だろう?…とても軽い?』 ていねいにくるまれた包みをそっと開けてみる。 あらわれたのは、細い枝先に咲く薄…

2017.12.4

空の光も空気も、『もう冬だ…』と言っている。 それでも、朝、ベランダに出ると、街路樹のイチョウが『まだ秋…』と言う。 ほんとうに、もう12月というのに、あのイチョウは日に日に黄金色を濃くしているのだ。 きっと、あのイチョウが黄金色の葉をすっかり落…

2017.11.30

9月以降、朝夕の新聞が読まれないままに、そっくり机の上に重なっていった。 たぶん、私がするべきこととしての優先順序がもっとも低かったのだ。 海も図書館も、足が遠のくばかりだった。 師走を目前にした今、3か月の間にバラバラに飛び散っていた心と体が…

西方遺跡(下寺尾官衙遺跡群)の平安時代の溝

26日、空は明るく、予定がなければ高麗山に向かいたかった。 しかし予定通り、茅ヶ崎市の遺跡調査発表会の会場に向かう。例年と異なり、発表会は新庁舎で行われた。初めて入る新庁舎はお役所らしくなく、アットホームな明るい空間だった(隣町には、こんなに…

”ギリギリス”が鳴く夜

国土交通省では、季節の移り変わりに惑っているのか、”ギリギリス”が鳴いている。 「(セーフ)ギリギリ」「ギリギリ(セーフ)」と鳴いているようだった。 どう見ても、政府のその鳴き方はアウトなのだった。 不謹慎ながら、その鳴き方に思わず笑ってしまっ…

益子町の古寺

20日、”栃木の仏像”を訪ねる旅に参加し、益子焼で知られる益子町へと向かった。 講師の先生たちと共に、三つのお寺…円通寺・西明寺・地蔵院…を廻った。 折りしも秋色が深まるなか、いずれのお寺も、瞑想に入っているかのように閑かなたたずまいだった。 大沢…

久しぶりに聴いた”啖呵”

20日夜、出先から帰って、一息ついたのは真夜中近くだった。 眠ろうとしても、頭がワサワサとして、なかなか眠る気分になれなかった。 一日がかりの旅の刺激が頭のなかで点滅し、脳内の映像画面が早送りされているようだった。 ひんやりした寝床の中で、『そ…

2017.11.20

20日朝、真冬のような曇天のなか、鶴見の講座の一行に加わって益子町に向かった。 一日がかりの旅の目的は、三つのお寺を巡り、それぞれにすまわれる古い仏様たちを拝すること。 神奈川を抜け、東京を抜け、北関東へとバスがひた走る。 小さな窓の外…秋を迎…

2017.11.14

14日、ようやく上野に出かけた。 上野駅から公園にかけて、『今日は休日…?』と思うほどの人出だった。 文化会館や動物園や美術館や博物館に吸い込まれてゆく人々。 11月の空の下、みんなの何かわくわくした気持ちが行き交っているようだった。 私もそうだ。…

2017.11.7

立冬の朝…心地よい冷たさの空気。 電車を乗り継ぐことなく渋谷駅に。 明るい空に誘われて、バスには乗らず、歩き始める。 そして、予定通り迷う。 それでも、大きく迷うことがなかったのは、途中で学生さん達の流れを見つけることができたからだ。 若い人達…

コメントをいただき、ありがとうございます。

3日、国会議事堂前に集まった人々。 主催者は”4万人”と発表していました。 あの日、同じ時間、同じ空気感をともにした方の言葉を読ませていただきました。 そして、あの場所に一瞬生じたつながりや広がりの感覚は、私だけのものではなかったと思いました。 …

”お伴の参加者”たち

3日の国会議事堂前。 歩道にあふれるばかりの参加者のなかには、小さなお供を連れた人もいた。 黒い瞳をした小さなお供は、集会の人波がお尻にぶつかっても、気にするふうがなかった。 友人から頼まれた分も、とシュプレヒコールに力が入る私とは違って、小…

リンゴの夕陽と薄荷ドロップの宵月

先だって見かけた地下道の絵。 今日も地下道を通った。『おや?』と思った。 絵の奥の富士山の横に、夕陽が、それもリンゴの夕陽が描き加えられていたから。 あの日、塗りたての絵はまだ完成していなかったのだ。 作家は、夕陽のリンゴを描くのを最後に取っ…

2017.10.30

本日は晴天なり。 朝の空が水色だった。 台風一過。 出かけるなら、午前中の海だ、と思った。 海岸に着く。 やっぱり、大島が浮かんでいる。 富士山は雲のなかから、ほんの少しだけ裾野の曲線を覗かせていた。 波打ち際近く、ウエットスーツの女性が腰をおろ…

2017.10.28

春・夏・秋・冬…若い頃に季節の移り変わりに今ほど関心をもたなかった。 ただ、秋の気配だけは特別に意識しないではいられなかった。 それは秋という季節が、自分の呼吸を急に不安にさせる季節だったから。 そして、それは漠然とした孤独と郷愁がないまぜに…

場所の記憶

10月11日夜、新宿駅南口の改札口を抜けた時、人々の流れのなかで、突然”国際反戦デー”という言葉が浮かんだ。 場所の記憶…個人の社会的記憶というものは、雑多な要素からなる”或る雰囲気”として記憶の奥底に沈んでいるらしい。それが時たま、眼の前の風景に…

”党の名前”

今朝、手に取った新聞の一面の見出し。 袖のタイトルで「立憲抜き」の文字が厭な感じで躍っていた。 公党の名前に冠された「立憲」という文字は、こんなふうに象徴的なものだった…そう感じた。 「改憲論議」と向き合う「立憲」。 「立憲」と「改憲論議」の文…

嵐が通り過ぎて。

22日午後、台風が近づくなか、川崎に出かけた。 川崎駅は異国のように様変わりしていた。どこに出かけても私は浦島太郎だ。 巨大な駅舎から外に出る。 コンサートホールまで歩くことにした。雨も風も、傘がさせないほどではなかったから。 広い通りがまっす…

鍵を持って。

たまたま、日本という”家”に生まれた。 その家は、”民・主・主・義”の4本柱で建っている”家”だった。 はじめ、青天井だった。 ”壁”がたち、”屋根”がつき、雨風をしのげるようになった。 脱脂粉乳を飲んだ時期もあった。 20歳まで無事に育ち、”鍵”をもらった…

オチは?

17日午後、20年来の飲み友達と1~2年ぶりに逢った。 1997年に知り合った時はお互いの髪は黒く、まだまだ若さの余韻があった…と思う。 いつしか友人の短髪はごま塩から白髪へと移り変わり、私も白髪を隠しようのない頭になった。 久しぶりの再会だったけれど…

修復の音楽

11日夜…何年ぶりなのだろう…初台駅で降り、コンサートホールまでの道を思い出しながら歩く。 都会の夜の外れに静かな空気が広がっていた。 この”音楽領域”の空気感をすっかり忘れていた。 閉鎖的なのか、内省的なのか。内側の光と音と熱気を隔離するような”…

2017.10.11

昨日の夕暮れ時、もう忘れてしまったほどにチマチマとした思いをめぐらせて歩いていた。 その時、見るでもなく見上げた空にピンク色の小さな雲たちが浮かんでいた。 いつもの家並みの上に浮かぶ何でもない雲。 でも、夕陽が沈もうとする時、一瞬、美しい雲に…