enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

リンゴの夕陽と薄荷ドロップの宵月

 先だって見かけた地下道の絵。
 今日も地下道を通った。『おや?』と思った。
 絵の奥の富士山の横に、夕陽が、それもリンゴの夕陽が描き加えられていたから。
 あの日、塗りたての絵はまだ完成していなかったのだ。
 作家は、夕陽のリンゴを描くのを最後に取っておいたのだろうか。

 買い物をすませた頃には日が落ちていた。
 いつものように、細い道で見上げた空に月が出ていた。
 『夕陽がリンゴなら、あの月は何だろう…』
 しばらく、似たようなリンゴを思い浮かべてみた。”ぐんま名月”?それとも ”トキ”?
 でも、じきに十三夜になろうとする月の形は、リンゴではなかった。
 
 立ちどまって、しばらく月を眺めた。
 思いついたのは、子どもの頃に大好きだった薄荷のドロップだった。
 あの缶カラに入った色とりどりのドロップのなかでも、薄荷のドロップは数が少なかった。
 そして何より、スッとする薄荷の味が楽しみだった。

 『火垂るの墓』の小さな女の子が好きだった「サクマ式ドロップス」…そうか、この世界に野坂さんはもういない…。月を眺めながら、そんなことを思った。

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    完成した絵のリンゴの夕陽の部分(10月31日):
    富士山の斜面を転がり落ちそうな夕陽。夕陽だけではなく、ほかにも手が加わっているらしく、先だって
    とは少し印象が違って見える。
    
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    完成前の絵(10月28日):夕陽がまだ無い。その代わり、富士山にも相模湾にも赤い筋が流れている。

10月31日の月:明日、11月1日が十三夜だろうか。
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