enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

修復の音楽

 11日夜…何年ぶりなのだろう…初台駅で降り、コンサートホールまでの道を思い出しながら歩く。

 都会の夜の外れに静かな空気が広がっていた。
 この”音楽領域”の空気感をすっかり忘れていた。
 閉鎖的なのか、内省的なのか。内側の光と音と熱気を隔離するような”音楽領域”。
 冷ややかな石のベンチでしばらく涼んだ。10月も半ばというのに初夏の夜を思いながら。

 音楽の不思議。音の不思議。響きの不思議。
 コンサートが終わる頃には、夏の間にただれていた傷が修復されているような気持ちになっていた。
 音の波が、音の震えが、人々の心を揺り動かす。そして、溜まっていた澱が、音に運ばれてどこかに消えてゆく。

 夜遅く帰ってからも、そして今日も、エドガルドの「我が祖先の墓よ」を繰り返し聴いた。
 私は、正体の分からない屈託を晴らすのに、たった一つのアリアを聴くだけでよかった…今はそう思いたい。

光①
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光②
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