enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

納戸に眠っていたもの

 この秋から冬にかけ、思うところあって、ささやかな身辺整理を試みた。
 現在の部屋に移り住んで10年。
 何かしらを求め、あてどなく動き回るうちに、他人にとっては”ゴミ”そのものでしかないものが随分と溜め込まれていた。
 それらをよくよく見れば、今となっては、とっくに私から置き去りにされてしまったものなのだった。

 狭い納戸からも、多くのものがはじき出された。
 はじき出すという行為に罪悪感のようなものもあった。それでも、無性に何か代謝をしたい…何かを吐き出すことで、新しい何かを採りいれる空間をつくりたい…そんな衝動があった。自分の頭を整理できない代わりに、納戸を片づけてみたのかもしれない。

 資料類を蓄えていた納戸の書棚。重みでたわんだ棚板は張り裂ける寸前だった。老化した私の脳味噌のどこかにも、こんな部分があるに違いない…惨めな書棚になっても、まだ一応の役割を果たし続けてくれている。

 はじき出されたもののなかには、なぜ自分が持っているのか思い出せないものもあった。いつ、どこで、何のために?
 例えば、シューベルトの絵の切手(?)が印刷された便箋と封筒のセット。シューベルトをよく聴いていた頃の買い物なのだろうか。いつか使ってみよう…そんなふうに生き延びるものがあるのは嬉しかった。

 こうした整理を何回か繰り返して、やがては私も消えてゆくのだな…埃を吸い込み、何度も吸入器を使う破目になりながら、そんなことも思った。

 結局、納戸は私の頭よりはずっとすっきりと整理された。次に溜め込まれたものがはじき出されるのは何年後だろう。それまで、私はどのように生きているのだろう…。

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納戸に眠っていた便箋と封筒:20日、使う機会があった。というより、意図的に使ってみた。二組が暗い納戸の世界から外の世界へと飛び立っていった。