7月下旬、1冊の歌集が届いた。封筒と便箋には、友人の几帳面な文字が並ぶ。
友人はいつからか、短歌を詠む人になった。
私は、折にふれ、歌人となった彼女の話を聴き、それを楽しんできた。
出来上がったばかりの同人誌の印象は軽やかで涼しげなものだった。
”聖なるもの”を開くような気持ちで、歌人たち十首ずつの歌を読み進めてゆく。
それぞれの歌人の心の動き、その眼がとらえたものが、短歌という形に収斂して、遠く離れた私の目の前に顕れることの不思議。
友人の歌は、その人となりを知っているだけに、私の心に素直に映りこむ。
一週間ほどして、彼女に葉書を書いた。
数日して、彼女から電話があり、長く話し込んだ。そして励まされた。
不思議だ。
勤めを辞めてすでに30年近いのだった。
同期入社の友人たちと異なり、わずかに年齢の若い彼女とは、一緒に旅に出たり、頻繁に連絡を交わしたりはしていない。それでも、今なお、こんなつながりが続いている。
私は彼女の歌が好きだし、彼女とのつながりを大切なものに感じている。