enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2017.12.21

 午後、まだ陽射しの温かいうちに、図書館に向かった。
 先だって借りた本は対話集ということもあって、珍しく返却期限前に読み終わったのだった。
 私には歯が立ちませんでした…いつものように、そんな敗北感を抱かずに本を返せると思うと、足取りも軽い。
 そうなのだ…読んで楽しかった、楽しかったから読めた…そんなことでも、私には嬉しいのだ。

 図書館の窓口のそばで読みたい本を検索していると、不意をつくように声を掛けられた。
 思わずたじろいで顔をあげると、今春までサークルを共にしていた人が笑顔で立っていた。
 そして、図書館だから静かにしないとと、近況を伝える話を短くとどめ、「じゃまた」と言って書棚のほうへと去っていった。
 なつかしかった。サークルの活動を終えて、その人も私も、またそれぞれの時間を生きている。みんなそうなのだ…そう思った。

 新たに1冊の本を借り、外に出る。陽射しのぬくもりはすっかり消えてしまっていた。
 石畳の道に並ぶ裸木の枝先を見上げながら歩く。
 サクラの枝は、水色の空を背にして、くっきりと花芽のシルエットを浮かび上がらせていた。
 そうだよね、新しい季節の準備を始めているんだよね、と思った。
 新しい季節に向かって、新しい命が脈動している。
 小さな花芽のおかげで、12月の淋しさも冷たさも、何となくしのげそうな気がしてきた。

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12月21日のサクラの木