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私の第三十四夜をつづります。

バンテアイ・チュマールの”千手観音像(レリーフ)”①

 カンボジアの遺跡のレリーフは美しい。野ざらしレリーフはさらに美しい。
 形あるものが、強い太陽光や雨風や“時”の流れにさらされ、摩滅してゆく。
 生まれた場所で、無防備で、幾時代か美しく、そしていつかは消えてゆく。
 形あるものとして、剥ぎ取られ、収蔵庫で保管され、人工光のもとで無機的に陳列される…そうした運命はたどらない。

 バンテアイ・スレイのレリーフには、個人的に追求された”美”の様式の濃密さを感じたのに対し、バンテアイ・チュマールのレリーフには、王の祈り…より普遍的な精神世界が広がっているように感じた。

 なかでも、”千手観音像”と呼ばれるレリーフの軽やかさ・繊細さに、量感・質感豊かな立体表現ではないからこそ?の精神性・抽象性を感じた(読み取らせる図像としてのレリーフ?)。

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”千手観音像”のレリーフ (1)・(2):
開口部をくぐると、壁面に顕現する”千手観音像”…向かって左(1)と向かって右(2)の二像。
(2)の前には、野の花などが供えられていた。

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千手観音像レリーフ(1):
顔は失われている。【追記:頭頂部に小さな仏様の顔が描かれているようなので、「多面」と推定。】
腕は左右11本ずつ。胸の前の一対の腕は、指に短い”紐?のようなもの”を挟んでいる。
そのほかの腕は左右に広がる。指は小指を立て、親指先と人差し指先を合わせている。
また、体を中心に、曼荼羅図のように11の円区画が配置され、各円の中には、”蛇?のようなもの”を胸から首横へと捧げ持つ”アプサラ?のような像”が描かれている。

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千手観音像レリーフ(1)の周辺の図柄:
11個の円区画の中の”アプサラ?のような像”は何を意味しているのだろう? 
左右11本ずつの腕、11個の円区画…その「11」という奇数が持つ特別な意味が知りたい(そういえば、十一面観音像の「十一」はなぜ「十一」なのだろう?)。