enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2013.3.20

 図書館に出かけた。噴水のそばで目立っていた辛夷の花はすでに散っていた。一週間ぶりに見るケヤキは、オリーヴ色の若葉を軽やかにまとっている。もうすぐ四月なのだ。 
 図書館の2階で本を借り、3階の学習室に向かおうとした時、後ろから幼い女の子が何か叫ぶように駆けてくる気配がした。
 私を追い抜きざま、その子が振り返ってたちどまった。泣きべそをかいて、しゃくりあげている。何歳ぐらいだろう。5歳か6歳か。「どうしたの・・・お母さんはどこかな」 「お母さん・・・(また泣きそうだ) いないの!」
 いなくなってしまったお母さん。1階の子供室から2階まで探し回って、見つからなくて、こんなに泣いているのだ。小さな泣き顔は、何だかジブリのアニメに出てくる女の子を思い出させた。貸し出しの係の人が来て、彼女と一緒にお母さんを探しに行ってくれた。手をひかれた小さな女の子の後ろ姿に、お母さんも、あなたのことを探しているよ、と思う。私にもあの女の子のような頃があった、と思う。
 学習室でしばらく静かな時間を過ごして外に出る。文化公園の桜の樹の下には、たくさんの桜が花の姿そのままに落ちていた。メジロ達にとって、今が食べごろなのだろう。
 
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  ほのかに紅さし 風にまかせて 辛夷散る 今なお白い花びら 薄紅さして