17日、雨上がりの朝。空気が潤い、そして温かい。
高麗山に行ってみたくなった。
高来神社の裏手から、八俵山にすぐに通じる山道を選んだ。正午を知らせるチャイムが聞こえた。
谷に入ると、途中から新しい路へと付け替えられていた。
道脇のそこかしこにヤブツバキの花が落ちている。
子供のころから身近な高麗山に、ヤブツバキの花の記憶など残っていない。
眼が見たとしても、その時の心に届かなければ見ていないことと同じなのだろう。
今日は、その鮮やかな花色が道標のように親しいものに感じられた。
20分余りで八俵山に辿りつく。いつも中食をとる明るい林地に向かう。
この林のなかで空を見上げ、木立ちに響く風の音や鳥のさえずりを聞く。
そのために高麗山に登るのだと思う。
突然、これまで高麗山で一度も眼にしたことのない光景が広がった。
数十人もの人々が、一様に長大な望遠レンズのカメラを三脚に据え、林間地を囲んでいる。
数分後、二羽の鳥が林に舞い降りてきた。木のように林立していた人々がわずかにどよめく。シャッター音が続く。親しみのこもったつぶやきも聞こえる。
キレンジャクはしばらくすると、再び枝先に舞い上がり、人々の視線を一身に浴びながら悠然と毛づくろいなどを始める。
高麗山にはいつの季節も新鮮な風が吹いている。
桜の枝に留まるキレンジャク
光いっぱいのモミジイチゴ?