世界はいつから、こうした暴力の時代に入ってしまったのだろう。
私は、日々漫然とニュースを眺めて過ごしている。
不毛で理不尽な暴力の結果を、日々漫然と眺めて過ごしている。
海に向かう道で、遠い雷鳴がかすかに聞こえた。
見上げれば東の空が暗く、その雲の奥で雷が鳴っているらしかった。
遠い雷鳴だけがひっきりなしに続く。光は走っていない。
海はあきらめて引き返すことにした。
鉛色の空を見ながら歩く。
『今日の午後の天気予報はどうだったろう…』
いきなり、大粒の雨がザァーと降りはじめた。
雨宿りする屋根があるところまで、歩くしかなかった。
私を追い越して走ってゆく人。だれも傘を持ってはいない。
久しぶりに、髪から水滴がしたたるほど濡れてしまった。
それでも、嫌いな雨ではないと思った。じきに止むのだろう、と思った。虹が出るかもしれないし、とも思った。
ずぶ濡れのまま、店に入り、買い物をした。ずぶ濡れなのは、私だけのようにも思えた。
レジの後ろで話し声が聞こえた。
「バケツをひっくり返したような雨っていうのかしらね。」
店を出ると雨は上がっていた。
歩道のところどころに水たまりがあった。
空は青く輝いて、電線上のツバメはしきりに羽繕いをしている。
近所の猫たちは軒下でじっとしている。
家に帰って、私もツバメのように髪を洗い直した。
海岸道路の歩道橋からは、東の空にかかる虹が見えた、と聞いた。
半分だけの虹だった、と聞いた。
雨の予感①(7月4日午後)
雨の予感②(7月4日午後)