enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2016 .7.4

 世界はいつから、こうした暴力の時代に入ってしまったのだろう。
 空爆テロリズムという、国家や組織の規律のもとに爆発する暴力。地域紛争という、宿命のように反芻され続ける暴力。身の周りの人の暗い情動による暴力。
 私は、日々漫然とニュースを眺めて過ごしている。
 不毛で理不尽な暴力の結果を、日々漫然と眺めて過ごしている。

 海に向かう道で、遠い雷鳴がかすかに聞こえた。
 見上げれば東の空が暗く、その雲の奥で雷が鳴っているらしかった。
 遠い雷鳴だけがひっきりなしに続く。光は走っていない。
 海はあきらめて引き返すことにした。
 鉛色の空を見ながら歩く。
 『今日の午後の天気予報はどうだったろう…』 
 いきなり、大粒の雨がザァーと降りはじめた。
 雨宿りする屋根があるところまで、歩くしかなかった。
 私を追い越して走ってゆく人。だれも傘を持ってはいない。
 久しぶりに、髪から水滴がしたたるほど濡れてしまった。
 それでも、嫌いな雨ではないと思った。じきに止むのだろう、と思った。虹が出るかもしれないし、とも思った。

 ずぶ濡れのまま、店に入り、買い物をした。ずぶ濡れなのは、私だけのようにも思えた。
 レジの後ろで話し声が聞こえた。
 「バケツをひっくり返したような雨っていうのかしらね。」
 
  店を出ると雨は上がっていた。
 歩道のところどころに水たまりがあった。
 空は青く輝いて、電線上のツバメはしきりに羽繕いをしている。
 近所の猫たちは軒下でじっとしている。

 家に帰って、私もツバメのように髪を洗い直した。
 海岸道路の歩道橋からは、東の空にかかる虹が見えた、と聞いた。
 半分だけの虹だった、と聞いた。

雨の予感①(7月4日午後)
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雨の予感②(7月4日午後)
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