昨日の朝、姪からの電話。
「これから、すご~く美味しいものを届けにいきますから!」
姪の声はいつものように笑っている。40代半ばになっても、小さい頃のつぶらな瞳のままの姪。
届けられたのは”緑色のブドウ”。
シャイン・マスカットという品種なのだという。朝早くに買い求めてきたという。
私はブドウのなかでも、なぜか、緑色のブドウが一番好きだ。
黒いブドウ、赤紫のブドウ、緑色のブドウのなかから、どれかを選ぶとしたら、迷わずに緑色のブドウ…。そして、緑色のブドウのなかでも、マスカットは一番特別な存在のように思い込んでいる。
姪はそんなことを知るはずもないけれど、届いたのは緑色のブドウだった。
「このブドウ、数が少ないらしくて。二週間で収穫が終わっちゃうんですって。」
明るい声でそう言うと、オリーヴのように細い長身をひるがえし、手を振りながら帰っていった。
私にはもったいない秋の恵み。
もうマスカットの味を忘れかけていた。
遠い記憶に残るマスカットの味を思い出せるかもしれない。
まだ食べていない緑色のブドウ
このブドウを眺めていて、『一房の葡萄』を思い出した。あの葡萄は紫色。先生の美しさを際立たせるための”紫色の葡萄”だった。