enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2018.10.21

 21日朝、横浜に出かける前に、近くの店に買い物に行った。
 信号を待ちながら見上げた空、街角の空気…どこかに冬が潜んでいるような気配があった。
 安曇野の友人のメールにも、今朝は4℃まで冷え込んだ、と書かれていた(北アルプスの麓の朝はすでに震える寒さなのだ)。
 平塚でも、まだ黄葉も紅葉も十分に進まないうちに、もう冬の準備を始めているのかもしれなかった。それなのに、間抜けな私はずるずると夏を引きずった暮らしを続け、すっかり風邪を引いてしまっていた。それでも、今日はオペラを聴く、初めて『アイーダ』を聴くのだと思うと、外出も苦にならなかった。
 
 便利になった地下鉄から吐き出され、港の近くの通りに出る。山下公園に沿った道筋は銀杏の実で足の踏み場も無く、ここの季節は秋そのものに違いなかった。 
 開演時間まではゆとりがあった。
 青い海面に誘われて公園に入る。
 晴れた日曜日の公園の混み方は、ちょうど『グランド・ジャット島の日曜日の午後』のような”印象”だった。
 休日を楽しむ人々を遠く眺めた。その風景は、私が感じている現在の日本の社会のイメージとは別世界のように晴れやかでのどかなのだった。
 デモもシュプレヒコールも必要の無い世界、分断も対立も無いように見える世界…私がいつも感じている世界とは別物の世界が、私の知らないところで存在しているかのようだった。
 港の近くの公園で休日を楽しむ人々が、スーラの絵画のなかの人々のように遠く見えてしまう自分。この数年の間に、自分の周囲に何か浅くはない溝があるらしい…そう気づかされることが多くなった…そんな気がする。

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公園の一角に存在する”別世界”:
半日陰を好む植物や小さな蝶・蜜蜂たちが暮らしていた。

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県民ホールのなかの”別世界”:
残念なことに、ラダメスの配役が代わっていた。しかし、”別世界”が進行するなかで、そんなことはすっかり忘れてしまった。初めての『アイーダ』を十二分に味わったこと…これは確かな現実か?

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ホールの窓から見る横浜港:
『ラダメスはなぜアムネリスにあれほど冷たいのか?』…幕間に頭のなかでグルグル回る疑問…こんなことで頭がいっぱいになるのは何だか嬉しい…。