enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

かつての私が出逢った本

 十二月。
 誰もが”来し方”をぼんやりと振り返る季節…そんな季節に私は生まれたし、今や私の人生年齢に見合った”締めくくりの季節”。
 郷愁やら感傷やらメランコリやらの水溜りが、ふり返る道筋のあちらこちらに見え隠れする季節。

 12月。
 現実的に片づけなくてはならないことを思い出す季節。
 先延ばしにしてきたことを思い出す季節。
 私の家族の実家…私がいっとき暮らした家…は、もう何年も”時間の止まった空間”、死んだ時間が深々と降り積もる空間になっている。
 
 そこには、私が置き残してきた”モノ”たちがまだ棲んでいる。それらをもう一度、自分の手にとってその重みを確かめなければならなかった。私にしか重みが分からない”モノ”たちの行く末を見届けなくてはならなかった。

 12月という季節になって、ようやく、半世紀前に置き残してきた”モノ”たちを手元に引き取ってきた。
 人はなぜ”モノ”に思い入れするのだろうか?
 私の場合、私の記憶装置に漠とした不安があるからかもしれない。
 ”モノ”を失うことで、かつての私を失うことを恐れているのかもしれない。

~私の手元に残った本たち~
時間による変容の痕跡は意識上にとどまってはいない。
かつての私が、今の私からどれほど遠くなったことか。
痕跡をとどめている不思議な本たち。
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