enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

06.1.12

絵のない絵本
 
私が冷たい星くずになって
ふるさとの星に別れを告げようとしたとき
黒く波打つ海に光の砂の島が浮かんでいたのだった。
 
私は眼を凝らした。
なつかしい胸さわぎがして。
 
そして三日月の形に光る島の岸辺に
忘れがたいひとの影をとらえた。
 
六月の夜の重い風がゆらめいて
親しんだあたたかな形がたちあらわれた。
 
私は”やぁ!”と声をかけずにはいられなかった。
 
あたたかなひとは ふと立ちどまる。
 
私はふたたび やわらかな六月の闇のなかに滑り込んだ。
 
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