enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

もう一つの白黒映画

2012.5.17
 7日、これから旅に出ようというのに、新緑のメタセコイアの並木道の写真を見ていた。そして、『第三の男』のラストシーンが、なぜいつまでも「かっこいい」のだろうと思った。古い白黒映画のことをあれこれと思い出す。それらの映画のかけらが、今の自分のどこかにつながっているような気がした。
 その時は分からなかったジャン・マレーの映画の邦題を知った。『美女と野獣』、『オルフェ』・・・そういう名の映画だった。そして、長く忘れられなかったもう一つの白黒映画は『悪魔が夜来る』・・・そんなおどろおどろしいタイトルの映画だった。
 これらの古い映画を、60歳となった現在の自分が観るどう感じるのだろうか。カラーのザジの叔母さんは変わらずにマネキンのように美しいだろうか。子供の私はジャン・マレーのどこに惹かれたのだろうか。額や顎の線だったろうか、瞳だったろうか。『悪魔が夜来る』の衝撃的な心臓の鼓動は、再び私の鼓動と重なるのだろうか。古い映画の忘れられないシーンのなかに、昔の私も今の私も同じように惹かれないではいられない何かがきっとあるはずなのだ。それが何なのか・・・言葉にできるのならば、その形をつかんで今の自分に伝えてみたい。
 
五月の夕暮れ
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