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私の第三十四夜をつづります。

列島展で出会った少女

 13日、「日本列島展2013」を見学する機会があった。
 地元の平塚市博物館では、「真田・北金目遺跡群展」が20日にオープンする。発掘された資料の価値は、列島展に負けないのでは?という思いを持ちながら両国に向かった。
 しかし、会場に足を踏み入れた途端、特集展示「陵墓の埴輪」群の力強いパワーに惹きつけられる。まず、その量感。21世紀の私達には失われた価値観の形。
 その中に、平塚の南原B遺跡の方形周溝墓から出土した畿内系土器(壺)に良く似た埴輪があった。箸墓古墳の壺形埴輪だ。特徴的なシルエットが共通している。ただ、全体の大きさ、首の太さ、胴部のふくらみのラインが少し異なるだろうか。平塚と箸墓でなぜ同じような土器が出土するのだろうか。
 巨大な埴輪が量感で迫ってくるのに対し、生活感と親近感のフォルムで現代の私達を惹きつけるものもあった。 御廟山 古墳の「囲・家形埴輪」や、仁徳天皇陵古墳の「 巫女 をかたどった埴輪」だ。
 家形埴輪の塀には扉がつき、半開の状態になっている。今、その扉を誰かが開けたところ…その一瞬が凍結されている。
 また、巫女とされる女性はその髪型から、江戸時代の町娘のようにも見える。ブロンズ製であれば、鼻の造形は近代彫刻の少女像のようだ。しかも、正面像と横顔とは別人のように印象が異なっていた。彼女の幼い声までもが聞こえてきそうだと思う。
 大勢の人々と一緒に展示解説を聞きながら、地元の遺跡展にも多くの人々が訪れてくれることを想像した。真田・北金目遺跡群の遺物は私達に何を語ってくれるのだろうか。
 外の亜熱帯的な暑さから遠く離れたさまざまな時間の形が、列島展の空間に集合してスポットライトを浴びている。今、平塚市博物館の暗い展示室でも、華やかなデビューを前にした遺物たちが息をひそめていることだろう。
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