enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2013.7.7

 梅雨明けの陽ざしとはこうも強かったろうか。毎年のことなのに思い出せない。
 大きなケヤキの枝をざわつかせて南風が吹き抜け、その葉影が波のように揺れ動く。
 その木洩れ日の波間を見つめていて、一瞬、気が遠くなる。
 今日は、午後一番の待ち合わせの約束をすっかり忘れられたことが結構こたえていた。
(60代にもなっているのに、たいしたことはない。相手にとって自分が何ほどの存在でもないと思い知らされることに慣れるのは・・・なかなか難しい。)
 こういう時、村上作品のなかで使われる「やれやれ」というフレーズは役に立つ。
 『やれやれ・・・』
 約束を忘れられ、歩く予定のなかった道筋を通ることになって、思いがけずクチナシの花に出会った。
 思わず香りをかぐ。『ああ・・・六月の花の香りだ』
 今年はもうあきらめていた六月の花に、今日出会えたのだ。
 来年、またこの道を歩けばクチナシの花に出会える・・・それだけでいい、と心がほどけてゆく。
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