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〔1116年8月〕 【『新編国歌大観』:「雲居寺結縁経後宴歌合」から】
~五番 露 左勝~ 三宮相模君
9 ゆふされば をばな おしなみ ふくかぜに たまぬきみだる のべのしらつゆ
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初めて三宮相模君の歌を知った時、良い調べの歌のように感じた。そして、歌われた情景とともに、その流れるような調べが記憶に残った。
また、三宮輔仁親王(1070~1119)に、言わば”不遇・悲運”のイメージを重ねていたために、この歌の背景に、三宮家に仕える三宮相模君の思いがこめられているようにも夢想していた。その後も、『新編国歌大観』を眺める時、三宮輔仁親王の歌が目に留まるようになった。その一つに、三宮相模君の「をばな」を詠んだ歌の情景に通じるような歌があった。
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【『新編国歌大観』:「和漢兼作集」から】
~第五 秋部上~
秋のころ 山里なる人 返事に 無品 輔仁親王
568 秋風に をばな なみよる わがやどぞ 山里よりも つゆけかりける
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無品輔仁親王の568の歌が詠まれた年代は分からない。ただ、秋の情景を歌う言葉…「をばな」、「おしなみ」・「なみよる」、「ふくかぜ」・「秋風」、「しらつゆ」・「つゆけかりける」…が似通うことに、二人の歌人に共通する”物思い”を感じた。そして、三宮相模君の歌が歌合に出詠したものでなければ、三宮輔仁親王の歌と、贈答歌のように、互いに響きあっていると思った。