enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2016.4.21

 九州での地震から、平塚市の上空を行き来する航空機の数がいっそう増えているような気がする。街を歩いていても、海岸にいても、銀色の機体が高く低く、頭上を通り過ぎてゆく。
 
 昨日の平塚の海は、白波が騒ぎ立っていた。寄せる波はヒスイ色。
 浜辺には大きな流木や海藻、ヒトデやカニなどが打ち上げられている。流木の一つは、全身に鎧のような貝殻の衣をまとっている。無数の黒い貝たちはまだ生きているのだろう。17日の大風で海から掬い上げられたものたちからは磯の匂いがした。

 駅から海へと向かう道にはタツナミソウやオドリコソウが咲く。海近くの教会の建物の近くではツバメの姿も見かけた。平塚の街も海も、ふだんのままだった。熊本市に住む甥や友人の今を思えば、この平塚の地も、まだ今のところはふだんのまま、ということなのだろう。


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打ち上げられた流木の一つ…その特異な形から、セガンティーニの絵《淫蕩な女たちへの懲罰》を思い出す。その絵には、暗い水底のような雪原のような死の世界が描かれていた。セガンティーニが描く光の世界は、どこかで静かな死の世界に通じているのかもしれない。

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南の海から北に向かうプロペラ機