8月の末…白馬村は夏の終わりを迎えていた。
青い峰々の麓の緩やかな棚田では、すでに稲穂が重そうにかしいでいる。
黄色い稲穂の海のところどころには、蕎麦の白い花畑が浮かぶ。
人々が小さな薬師堂に注連縄を張る。木流川沿いの彼方から祭り太鼓の音も聞こえてくる。
村では秋の収穫の季節が始まろうとしていた。
白馬村の七日間で、長い暑い夏のほとぼりがゆっくり冷めていくように感じた。
9月に入る…いつもの暮らしに戻るとすぐに、台風、そして大地震に襲われた各地のようすが次々と眼に耳に飛び込んできた。不条理な、理不尽な災害によって、人々のいつもの暮らしが一瞬にして叩きのめされる。そうした現実がいつか、首都圏にも…と思う。