enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

02.1.26

窓をたたく強い雨音に
 
子どものころの いくつかの 切り取られた記憶
それらが なぜ 意識の底から
くり返し 浮びあがってくるのか
 
長い間 意味ありげに保留され続けた 無声の記憶
 
五十歳を過ぎて ようやく わかるのだ 
それらが なぜ 反芻されなければならなかったか 
 
家族の匂いのする古びた台所や茶の間に
父の・母の・兄たちの それぞれの思いが
宙に浮いたまま そのままにあった
 
それらの謎めいた記憶の在処に戻っていって
私は ひとつひとつの意味を知り 泣く
 
今はわかるのだ
こうして 泣いて理解する日のために
それらを 忘れなかったのだと