enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2011-03-27から1日間の記事一覧

03.5

最後の日に いつかその日に 私を去りがたくさせるもの 私をくりかえし 生き続けさせたもの それは 嵐を含んだ鉛色の空 濃密な六月の夜の香気 落葉松の径にふりそそぐ黄金色の雨 そして たった私だけの記憶の羽ばたき 最後の日に 私は それらすべてを あの空…

02.1.26-2

時の流れこそ 「美」の遍在証明だった とどまろうとし 頽廃していくこと それこそが私の意識だった 風が流れ 雲が流れ 梢が鳴り 葉が舞い 木漏れ陽がゆらめき 季節がめぐり 旋律がめくるめく すべてがとどまらず あまねく美しい 私は その流れのかたわらで …

02.1.26

窓をたたく強い雨音に 子どものころの いくつかの 切り取られた記憶 それらが なぜ 意識の底から くり返し 浮びあがってくるのか 長い間 意味ありげに保留され続けた 無声の記憶 五十歳を過ぎて ようやく わかるのだ それらが なぜ 反芻されなければならなか…

01.6.25

六月という季節 六月 夜更けて ひそやかに 米をとぐ よびさまされる みずみずしい 生命の音 私は アジアの流れのなか 六月 濃密な夕暮れ 白い花の香りが 垣根をぬけて はるかな記憶の鍵穴にすべりこむ 私は アジアの風のなか 六月 雨上がりの午後に浴びるシ…

01.6.1

夕 泳 くらげのような月が 雲の波間を泳いでいた ピンクの波 ブルゥの波 真珠色の波 浮かぶように 沈むように 私もいつのまにか はかなげな光の海に漂っていた 月はやがて まぶしいほどに発光し 暗い水底に沈もうとしている