enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2012.5.7

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  新緑のメタセコイアの並木道。
 しかし、60年ほど前の映画の並木道の季節は冬だ。アリダ・ヴァリは長いコートを着ていなければならない。心を閉ざし、手さえも包み込む。枯葉が散らなければならない。何かが終わり何も始まってはいないのだから。
 モノクロの映画は色彩と引き換えに、心象風景の陰影を長く記憶に焼き付ける。
 『地下鉄のザジ』。『自転車泥棒』。そしてジャン・マレーコクトーの幻想的な映画の数々。邦題も分からず脈絡を欠いたまま、象徴的なシーンだけが濾過され、繰り返しよみがえる。
 『第三の男』では、並木道を歩いてくる人は真っ直ぐ前を見つめ、心を波立たせてはいない。きっと私もそうありたいと思ったのだ。
(『地下鉄のザジ』・・・カラーで撮影されていたと分かり心底驚く。子供の私が観たのは白黒TVの中のザジだったのか。カラーのザジ・・・想像が及ばない。観てみたいが怖くもある。)