新緑のメタセコイアの並木道。
しかし、60年ほど前の映画の並木道の季節は冬だ。アリダ・ヴァリは長いコートを着ていなければならない。心を閉ざし、手さえも包み込む。枯葉が散らなければならない。何かが終わり何も始まってはいないのだから。
モノクロの映画は色彩と引き換えに、心象風景の陰影を長く記憶に焼き付ける。
『第三の男』では、並木道を歩いてくる人は真っ直ぐ前を見つめ、心を波立たせてはいない。きっと私もそうありたいと思ったのだ。
(『地下鉄のザジ』・・・カラーで撮影されていたと分かり心底驚く。子供の私が観たのは白黒TVの中のザジだったのか。カラーのザジ・・・想像が及ばない。観てみたいが怖くもある。)