enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2015.9.17

 東京に向かうのは木曜なのだろうか、それとも…今週は、そんな宙ぶらりんの思いで始まった。
 
 月曜は、用あって出かけた。初めて歩く道で足が止まった。古い屋敷地の塀際にザクロの木があったから。複雑な色合いのしっかりとした実が生っているのをしばらく眺めた。
 火曜は、本を返し、再び借り直そうと、図書館に出かけた。公園の石畳の道に入ると、空気のなかにいつもとは別の気配があった。緑の葉叢のなかに濃い黄色がわずかに混じっていた。9月半ばで、金木犀が開花していた。
 
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 水曜は、何となく落ち着かなかった。午後になって、放っておいた携帯を開いてみた。すでに何通ものメール・電話の着信…いつも迂闊なことだ。国会の展開が早まったようだと記されていた。その携帯の文字面に発信者の苛立ちも感じ、慌てて駅に向かった。
 電車の中で、リュックに入れた『多摩考古』と『古代東国の考古学』の抜き刷りコピーを取り出す。執筆された方からいただいたばかりのものだった。そうした論考を読むことができるのは、私にとっては望外の喜びだ。こんな状態のなかでも、内容がしっかりと頭にはいってゆく。文章の間から、筆者の声が聞こえてくるからだろうか。新たな刺激を受けることが心地よかった。

 国会議事堂前の歩道にはいつもの緊張感が漂っていた。ただ、この日は、そのなかに再び金木犀の香りが混じっていた。季節の確かな歩みは、自分のなかの怒りと虚しさを慰めてくれたりもするのだ。
 しばらく、人々の波間を探し迷いながら、ようやく友人のもとに辿りついた。3時を過ぎていた。小さな折り畳み椅子が手渡された。美しいサーモンピンク色に光る国会議事堂の前に座り込んだ。
 暗くなった。周囲で光が点滅し始める。歩道を埋めて、車道際に迫る。眼の前に壁のように並ぶ二列の若い警官たち。彼らの真正面で、声が枯れ、腹筋を心もとなく感じるほど、全身で訴え続けた。彼らと一人ずつ眼が合った。みな、目をそらした。彼らの眼の表情は、私の興奮を少し鎮めてくれるものだった。
 雨が強くなった。まだ立ち続ける友人。私だけが家に戻った。

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国会議事堂前①

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国会議事堂前②

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国会議事堂前③