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私の第三十四夜をつづります。

四万川~日向見川沿いで②

 

四万温泉の湯はほぼ無臭・無色透明・中性…草津の湯に比べ、とてもやわらかな湯だった。
湯疲れも無く、翌日は四万川の小泉の滝・大泉の滝を経て、日向見川沿いに「日向見薬師堂」へと向かった。その日向見川の先には「摩耶ノ滝」、四万川へと引き返した先にはダム湖の「奥四万湖」が待っている。
(9時から15時半まで、昼食抜きで歩き回ることができたのも、温泉薬師様や日向見薬師様のご利益かもしれない。)

 

日向見薬師堂の「お籠り堂」:
唐招提寺礼堂の馬道(めどう)を思い出すような通路。茅葺きの屋根が重そうで、かつ愛らしい印象。

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日向見薬師堂:
その名前から、神奈川県伊勢原市日向薬師を思い起こす。
11世紀の歌人相模は日向薬師に籠って薬師経を読み、柱に歌まで書き付けたのだった。
 「さしてこし 日向の山をたのむには 目もあきらかに 見えざらめやは」
思えば、かの走湯権現もまた、温泉あってこその立地…歌人相模も参詣の折に、走り湯に浸かったりしたのだろうか…などとあらぬことを妄想した。
歌人相模が日向薬師を頼んだように、21世紀に生きる私もまた草津温泉を頼んでいる。そして、この山間の四万温泉を頼む人々もまた。日向見薬師堂はそうした人々の信仰をずっと受けとめてきたのだった。

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f:id:vgeruda:20211217120523j:plain  お堂の組み物と文様

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日向見薬師堂から摩耶ノ滝に向かった。
古い地形図上の荒れた谷道を進み、しばらくして行きあぐねた。再び車道に戻り、奥四万隧道の横に整備された遊歩道があることに気づく。
ところどころにある熊除けの鐘を叩き、持参の鈴も鳴らしながら歩いたけれど、出会ったのは男女の一組のみ。のどかな明るい山道だった。
途中、かつて木材を切り出して運んだというトロッコのレールが…錆びてねじ曲がりながらも…残っていた。山から下ろされたあと、木材はどこまで運ばれていったのだろう。

 

【摩耶ノ滝へ】
ハンマーも用意されている熊除けの鐘(左)と、「熊出没注意!」と注意を促す道標(右)f:id:vgeruda:20211217101636j:plain

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摩耶ノ滝:
音高く一気に流れ落ちる。私の写真ではその迫力を再現できない。

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滝見堂(?)の屋根上の苔

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