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私の第三十四夜をつづります。

新聞記事に出会うこと。

 

 

毎日、テーブル上の新聞を開いても、じっくりと眼を通す記事は少ない。ほとんどタイトルをふんふんと追いかけるだけの面(スポーツや金融情報の頁など)もある。
その一方で、”不”読書家の私にとって気重になるほどのボリュームで迫ってくる土曜日の「読書面」については、気合をふり絞って開かなくてはならなかったりする。

また、読んでモヤモヤする記事にも出くわす。
最近では、廃棄予定のアベノマスクについて、「2億8000万枚の希望者があった」という安倍元首相の発言を伝える記事を読み、その数字を不審に思い、モヤモヤしてしまう。私には、そんな具体的な数字を見聞きした覚えがなかったから。
『こうしてわざわざ記事にするならば、その数字の根拠まで取材するべきではないのだろうか? そもそも、書いた記者本人は、その数字を疑問に感じなかったのだろうか?』などと、未消化感たっぷりの気分になったりする

そうしたなかで、1月下旬から続いた「バイデン政権1年」(上・中・下)の記事や、「強欲の代償 ボーイング危機を追う」(1・2・3・4・5)の記事には”新聞記事”の手ごたえ(読みごたえ?)を感じた。とくに「強欲の代償」は読むのが楽しみだった。

前者の3回にわたる記事(ワシントン・ニューヨーク発)が、4名の記者チームによるリレー記事であったのに対し、後者は1人の記者さんによってシアトル・ワシントン・ニューヨークから発信されたもので、「強欲の代償」という刺激的なタイトルのもと、取材対象への忖度とは没交渉の歯切れ良い筆致も魅力的だった。

経済問題に疎い私にとって、こんなふうに明快な文章で問題点を切り取り、その様相をスリリングな流れであぶりだしてくれる記事には滅多に出会えない。

たまに出会う魅力的な記事…新聞はこうだから、やめられない…。

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「2億8000万枚」のその後:

「アベノマスク」について、1月29日時点で私が報道から知り得ていた情報は、次のようなものだった。

朝日新聞夕刊(1月24日)から】

…政府が調達した布マスクは約2億9千万枚。会計検査院が調べたところ、アベノマスク約400万枚と、福祉施設や妊婦向けの約7900万枚の計8300万枚が配られずに倉庫で保管されていた。…

その後、厚生労働省のHPでの中で、「申出は締め切りました」として、次のような経過がまとめられていた。 

 【厚生労働省HP:「自治体・個人・団体からの布製マスクの配布希望の申出について」 から】   

…布製マスクの配布希望の申出 について、令和3年12月 24 日(金)から令和4年1月28 日(金)まで 受け付けたところ、合計で約37万件の申出がありました。
  配布希望の枚数については、現時点でサンプル調査に基づいて推計すると、約2.8億枚以上となり、国の在庫約8,000万枚を上回る見込みであることから、売払いは実施しないこととし ます。…

こうして、アベノマスクの在庫は廃棄されることなく、配布の道が開けたことになる。それでも、私のモヤモヤは少しも消えない。モヤモヤの下に、“安倍政権への不信感”が熾火のように埋まったままなのだから。