enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2012.11.18

 秋になって澄んだ陽ざしと空気のなかを歩く。私にとって自由とは歩くことそのものだ。
 伊豆高原という土地を知ったのは20歳のころだったと思う。伊豆高原と日光とどちらを先に訪れたのだったか。どちらも陽ざしと空気の澄み方が強く印象に残った。その後、さまざまな季節に何度も訪れた。
 
 先週、久しぶりに伊豆高原まで行こうと西へ向かう電車に乗った(座席で本を読むのは楽しみの一つだ)。
 気持ちよく晴れていたので富戸の急坂を降りて海まで散歩に出かけた。
 富戸の海岸線は伊豆山にも似て山がそそり立つように海に迫っている。
 海岸道路も民家も山と海の狭間にようやく生き延びているかのようだ。
 荒々しい岩浜や柱状の岩壁に白波が立って砕け、目の前の深い青碧の海の先に大島が大きく横たわっている。ふだん見慣れた平塚の海とはまったく別の海だ。
 
 宇根の展望台で花の写真を撮っていると、岩礁の危うい突端で磯釣りをしていた人が釣り竿を置いてこちらにやってくる。「写真ですか?」と話しかけられた。その人が撮った今朝の日の出の写真を見せてもらう。大島の左手から昇ってくるのだという。未明から東伊豆を訪れ、日がな一日、海に向かっているのだろう。初めて言葉を交わすのに、昔から知っている人のように感じた。旅は良いものだ。
 
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 青い波と黄色のアゼトウナ
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青い海に吸い込まれそうな釣り人 
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 大島を見送る松の木
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 利島と新島
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夕暮れの大島(富戸の急坂から)