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私の第三十四夜をつづります。

2015.10.23①

 22日、始発電車に乗り、伊豆に向かった。伊東線の電車の中はすでに暖房が入っていた。
 無人富戸駅を降りると、秋が深まった気配を感じた。富戸駅からは”池”へと向かう。”池”は、東の大室山(580m)、西の遠笠山(1197m)にはさまれた矢筈山(876m)東麓の地域だ。まだ自分の呼吸を意識しないではいられないけれど、何とかなりそうだ。秋は短いのだし。
 久しぶりの富戸の急坂。ゆっくり登れば大丈夫だ。伊豆高原の別荘地域を曲がり抜け、下ったり登ったり。”池”の里まで、小さい秋を探しながら歩いた。
 
 澄んだ川水が音を立てて流れ、緑の山壁に囲まれて小さな水田・畑が広がる”池”の風景を初めて見た時、ちょっとした別世界のように感じたものだ。『この空間には、もともとは池のような景観が広がっていたのだろうか…』と、その成り立ちが気になっていた。
 今回、”池”の小川が「鳴沢川」という名であること、矢筈山が「げんこつ山」と呼ばれていることを知った。また、”池”という地名は、この地がかつて、大室山噴火による「せき止め湖」であったことに由来すると知った。まさに、すべてが名前の通りなのだった。
 そして、1870年に完成した”池”の隧道の背景に、地域周辺の3000~4000年前にかけての火山活動が係っていることを知った。縄文時代後期~晩期にまで遡る”池”の自然景観は想像できないけれど、自然の営力と人間の開発の歴史という視点が加わると、眼の前の風景はとても刺激的に映ってくるように思う。

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山頂がごつごつとした矢筈山(げんこつ山)…大室山よりも新しい噴火で誕生した溶岩ドーム、とのことだ。

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”池”の刈り取られた水田と大室山…富戸からの大室山は台形状に見えるが、”池”からは円錐状だ。刈り取られた稲は稲架掛けされていた。まだ刈り取られていないまま残っている田んぼが気になる。別荘地域に住む人たちが、これから収穫する田のようだった。

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抜き足差し足で歩き回るアオサギ…蛙や虫を探しているのだろうか。コサギの姿もあった。

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ヤマラッキョウの花…鳴沢川の流れのそばで咲いていた。

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谷戸の奥に作られた公園で…昔の電信柱が置かれ、古い看板のようなものが取り付けられていた。その赤色から、「山火事注意」の標示板?と思って近寄ると、”朝日”のデザインだった。「朝日 池ランプ 明るく 丈夫で 美しい」の文字があった。いずれ、柱も看板も腐食してしまうことだろう。