秋分の日、夕方近くに海に出かける。ドアを開けると、秋の空気が広がっていた。どこまでも誘われるような空気だ。
海岸には夕暮れまで休日を楽しむ人々が残っていた。
浜の片隅には台風18号で流れ着いた枝草を集めた袋がうず高く積まれている。そして、その中におさまりきれずに、大きな流木が横たわったままにあった。
海は波が高く、浜辺の形も変わっていて、引き波は変則的な動きをしている。
波打ち際には素足の少女。引き波が足のまわりの砂を掬い取っていくザラザラと不安定な感触を思い出した。
波が届かない乾いた砂浜では小さな男の子がしゃがんでいた。「かめさん!」と呼びかけながら、小さな黒い亀のあとを追っているのだ。亀は甲羅の左肩がえぐられている。
「痛そうだね」と男の子に声を掛けると、男の子は「カニに食われちゃったんだよ」と言う(そう言ったように聞こえた)。
小さな旅人はどこから来て、どこにたどりつきたいのだろうか、早足で浜辺をさまようばかりのように見えた。
帰り際、西の空を見やると、太陽の残光が山の端の空を火の色に輝かせていた。
もう疲れたと 柱を抱けば 秋彼岸 (2013.9.23)