enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2014.1.23

 季節は入れ子になっている。
 冬はいつのまにか春を育てている。
 たとえば雨上がりの朝、空気は春の水分を含み、見あげた空から春の光がふってくるのだ。
 あぁ、もう春は近くまできていると、冬が教えてくれるのだ。
 
 昨日の朝、外に出て真っ先に感じたのは、春のようなみずみずしさだった。
 遠い昔のドーナツ盤のB面に入っていた歌。
 「いつのまにか 雨が あがった 青い空が のぞいてる・・・」
 雨上がりのたびに、つい口ずさんでしまう歌。心が羽ばたく歌。初夏でもないのに、まだ1月だというのに、そんな雨上がりの朝だった。
 
 今日も胃袋に外気を入れなければ、と散歩に出る。図書館に向かった。
 年明けの学習室はいつも満員に近い。センター試験が終わっても、若い背中が並び、静かな熱気で埋まっていた。
 場違いな者のように感じながら、新着の本の中から『大山寺縁起絵巻 上下』(川島敏郎 2012)を手に取った。平塚市の指定文化財『大山寺縁起絵巻』の絵柄が美しかった。相模国の漆部伊波について何か新しいことが分かるかもしれないと思い、読み始めた。
 その川島氏の論考は、以前にも読んでいたものだった。氏は、良弁の父親とされる漆屋(染屋・染谷)太郎大夫時忠について、漆部伊波を想定されている。
 以前、感じた疑問は、父子とされる伊波と良弁との活躍時期がほぼ重なることだった。年代が合わないのでは?という疑問だ。今回もその疑問は変わらなかった。両者はあくまでも、同時代人として、相模国と中央の歴史に大きく係った人たちなのでは、と。
 図書館を出る。日がのびていると思う。こんなことが嬉しいのも、冬という季節だ。
 
(図書館の南では、市庁舎の建設が進んでいる。現代の郡庁クラスの役所は大極殿のように立派になりそうだ。この場所から、白い富士、青い富士を目にすることはできなくなった。)
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