enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2015.8.30

 今日の国会議事堂前の歩道には、7月のようなサンダルを壊すほどの灼熱こそなかったけれど、人々の波が歩道から溢れるばかりにうねり続け、人いきれで息苦しいほどだった。
 地下鉄の出口から次々と噴き出してくる人々。まさに怒りのマグマが地下から噴き出してくるようだ。人々の思いがこれほどとは…。人々の波から武者震いのような興奮が伝わってくるのだ。今、私たちの怒りが一つの塊になっている、と思った。
 シュプレヒコールも絶叫に近くなる。おなかに力を入れ、声の限りにとふりしぼる。15時ほどになって、急に胃のあたりが爛れたように痛み出した。まずい…自分にしてはいつになく弱気になる痛さだった。友人に断りを入れて、すごすごと”前線”を離れた。胃痙攣用の小さな錠剤を飲み込んでみる。このまま痛みがおさまるものか不安もあって、そのまま引き上げることにした。
 帰りの電車を乗り継ぐ中で、爛れるような痛みはひいてきた。気持ちも落ち着きを取り戻す。怒りの感情とは、これほどストレートに胃壁に影響を及ぼすものなのだ、と不思議な気持ちになる。
 ふと、前の座席の小柄な女性の姿が眼に入った。というより、その女性の小さく揃えられた膝の上の透明な袋の中身が眼に飛び込んできたのだ。「戦」「反」という大きな印刷文字だった。きっと、横2行の「戦争反対」の文字の左半分。
 70代半ば過ぎと思われるその女性は、しばらくして電車を降りた。その細く小さな後ろ姿を見送ると、バッグにつけられたバッジに”NO NUCLEAR”の文字があった。彼女もさっきまで国会議事堂前にいたのだ、と思った。彼女も私も日本国憲法下での主権者の一人、そう思った。

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8月30日の国会議事堂前で