enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2016.5.20

 五月が緑を濃くしながら進んでゆく。図書館への道も緑のトンネルになった。スイカズラの花の香りに誘われるように、黒いアゲハチョウがふわふわと舞う。
 図書館に入る。すでに4時を過ぎていた。あいかわらず、静かな空間。多くの人が机に向かっている。何の目的もなく、習慣のように訪れてしまう自分が少しやましい。わずかな時間を過ごして、再び外に出る。
 緑のトンネルを抜けてきた光と風のなかに、心も体もそのままとけ入りそうな…一年のなかで、そうした瞬間はそれほど多くないはず。そして、時刻は夕方でも、まだ昼下がりのような陽射し。しだいに足の運びがゆるやかになってゆく。ふだん、見えなかった草が声をかけてきたりする。立ちどまって、道端にうずくまる。そんなことを何回か繰り返しながら、駅に着いた。駅近くの街角にも公園にも、薔薇たちがまだ華やかに咲き残っている。五月という季節を際立たせ、輝かせる色鮮やかな薔薇たちも、じきに緑一つの姿へと移ろってゆくのだろう。

道端のコバンソウ…子どもの頃、バラセンで囲まれた原っぱでよく遊んだ。その頃の原っぱに咲いていた草花は今、“侵入生物”とされているらしい。
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