enonaiehon

私の第三十四夜をつづります。

2016.11.24

 東京は初雪。平塚はみぞれ。立冬から二週間余り…季節がはっきりと移ってしまった。
 
 昼を過ぎて、みぞれが細かな雨となった。
 急に海の景色が見たくなった。手袋をして外に出る。
 大通りで出逢った人は、二人とも美しい傘をさしていた。
 どちらも、少しだけ風変わりな花の絵柄だった。
 歩道の先々にスズメやハクセキレイの姿。みな、エサを探すのに夢中のように見える。

 海に着く。風で青海波模様になった砂浜。その小さな砂の波模様ごとに、白い雪が淡く乗っている。
 
 緑灰色の海の上には、白いもやがフワフワとたゆたっていた。
 波消しブロックも波浪観測塔も、その姿の半ばをやわらかく隠し、時に消え入りそうだった。

 波は靜かに寄せている。海の上のもやのゆっくりとした動きに見とれる。
 じきに雨粒が大きくなった。
 帰ろうとして初めて、ずいぶんと冷え切ってしまったことに気がつく。
 雨で手袋が濡れ、カメラをもつ指はかじかんでいた。
 急にさびしい気持ちになる。浜辺にいるのは私一人だけだった。
 
 帰り道を早足で歩いたからだろうか。家の近くで角を曲がろうとして、足元がフワフワと浮ついた。 
 自分がまっすぐに歩けていないことに、ちょっと驚く。
 密閉された部屋の暖かさに息をつき、遅い昼食をとる。
 そして、あの海の白いもやのような、フワフワとしたふらつきも治った。


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11月の初雪(みぞれ)の海

イメージ 2
11月の初雪の高麗山