毎年、8月という季節に経験することがある。
それは、日盛りの道を歩いている時、白い光と、その光を切り取った穴のような影とのコントラストのなかで、一瞬、”時”が静止したように感じることだ。
それは、その瞬間、世界が真っ白な、真空の空間として止まったような錯覚、あるいは、自分の個体の記憶のなかで、人々の歴史的記憶が系統発生を繰り返している…そのような錯誤の感覚だ。
今年の8月は薄日の射す日が続いているからなのか、その目眩に似た瞬間はまだ訪れていない。
いつもの目眩に似た瞬間とは、暦のうえでは、こうした季節に訪れるものなのだな、と初めて自覚した。
8月5日の夕方の空